参政党は東京都の有権者に「しっかり」理解されている?〜参政党への投票行動を分析する①

チキラボでは、「2025年東京都議選をめぐる有権者の政治意識調査」を実施。
とりわけ躍進が注目された、参政党に投票した有権者に焦点を当てた分析を行いました。
東京都民全体の傾向と見比べながら、参政党を支持する人にどのような傾向が見られるのかを整理したレポートをお届けします。
荻上チキ(社会調査支援機構チキラボ) 2025.07.04
誰でも

2025年6月22日は、東京都議会選挙の投票・開票日でした。この選挙では、自民党が議席を減らしたことで、都民ファーストが第一党になりました。

また、立憲民主党が議席を増やしたほか、国民民主党、参政党が新たに議席獲得。一方で、公明党や共産党は議席を減らし、維新、日本保守党、再生の道、れいわ新選組については獲得議席ゼロであったことも話題となりました。

参政党の「〇〇説」は正しいのか

中でも参政党については、新しい政党であることに加え、まだ政党や党首の知名度が低いこともあり、「いったいどういう政党なのか」と注目する動きがあります。長年、「参政党界隈」を取材していた「ウォッチャー」の方たちの丹念な発信も続き、その存在の言語化が進められています。

他方で、参政党の議席獲得には、インフルエンサーなどによって色々な「説」も飛び交っています。例えば、以下のようなものです。

  • 「無党派層ではなく、これまで投票にいかなかった無関心層・無投票層が多い」

  • 「支持者には、40〜50代の女性が多い」

  • 「参政党の医療への態度から、オーガニック好きのリベラル層が投票した」

  • 「参政党の外国人に対する排除的な政策がしっかり知られていないから」

実際、参政党に投票した「参政党投票層」は、どのような傾向があるのでしょうか。これらの「説」は、どの程度、実態をとらえているのでしょうか。

チキラボでは6/29〜7/1にかけて東京都議会選挙をめぐる有権者の投票行動を調査しました。その中から、参政党投票者に注目した分析結果を、いくつかの記事に分けて紹介します。

この調査では、対象者を絞り込むためのスクリーニング調査の段階で、回答者の基本属性(年齢、性別、年収、学歴など)や都議選での投票先などを把握しています。その上で、本調査①の参政党投票者には、その投票動機についても質問。さらに、②都の有権者全体の調査と共通として、各種の政策賛成度、外国人に関する認識、政治家や政党への好感度などを聞いています。

「考えが一致したから」8割、「日本人ファーストに共感」7割、「動画を見たから」5割、「医療観共感」4割

都議選における「参政党投票者」グループには、10の項目を用意した上で、投票時の動機として自分に当てはまるかどうか、その度合いを選んでもらいました。結果は以下の通りです。

「とてもあてはまる」に着目した場合、「『日本をなめるな』『日本人ファースト』との考えに共感したから」が最多でした。また、「とてもあてはまる」「まああてはまる」を合わせた場合、「訴えている政策の内容が、自分の考えと一致したから」が78.4%で最多でした。

党の考え方が愛国的だと思ったから」を選んだ人の割合も高く、「とてもあてはまる」「まああてはまる」を合わせると、68.5%の人が賛同。逆に、「党の考え方がリベラルだと思ったから」は、「とてもあてはまる」「まああてはまる」合わせて25.7%でした。

なお、図では数値を表示できませんでしたが、特定の宗教団体との関わりを動機とした人は7.5%でした。ただし、「投票者」の傾向と、デモや応援、選挙活動などにコミットする「政治運動参加者」の傾向は、イコールではない点に留意が必要でしょう。というのも、今回の調査は「投票者」を対象にしているのに対し、各種ルポルタージュでは、「運動参加者」などが取り上げられていることが多くあるためです。

これらの回答傾向から見ると、参政党への「投票者」は、参政党が右派的な主張をしているということを、「しっかり」知っているようです。そして、その右派的な主張に共感しているからこそ、参政党に入れている投票者が多いことが伺えます。

なお、この調査では、どの政策を重視して投票したかの優先度は聞けていません。「日本人ファースト」に共感している人が多いことは分かるものの、それを最優先にしたかどうかは別で、後者について今回は調査できていないということです。今後の調査課題となりそうです。

「日本人としての誇りをもてる教育を行うべき」に賛成・強く賛成合わせて 84.3%「外国人受け入れ」に賛成 7.9%、強く賛成は0%

では、参政党投票者の政策賛成度はどうでしょうか。この調査では、参政党からの発信があった論点のうち、いくつかをピックアップして項目を作成してみました。

「強く賛成」に注目すると、消費税減税が最多でした。この項目は、都内の有権者全般でも支持されている政策ですが、参政党投票者は、消費税減税への賛成度がより高くなっています。

一方で、「強く賛成」「どちらかといえば賛成」の合計で見ると、「義務教育ではもっと、日本人としての誇りをもてる教育を行うべきだ」が84.3%で最多でした。

また、「日本はもっと、外国人を受け入れるべきだ」という主張には、「強く賛成」が0%。「強く反対」「どちらかといえば反対」を合わせると、85.9%が反対となっていました。

東京都民全体の政策賛成度を見ると、外国人受け入れに「強く賛成」は4.1%、「どちらかといえば賛成」は26.5%、「どちらかといえば反対」が30.5%、「強く反対」が24.8%です。都民全体でも、消極層が多いことがわかる一方で、参政党投票者の「外国人受け入れ忌避」傾向の高さが目立ちます。

こうした結果から、参政党投票者の多くは、「参政党の外国人政策や愛国主義に目をつぶった層」ではなく、「参政党の主張を理解した上で自覚的に投票している層」であると見て取れます。

なお、参政党憲法草案に描かれていた「天皇主権」について尋ねると、賛成度合いは参政党投票者ですら低いことがわかりました。今後、参政党が、独自の「創憲」を発信し続けていくのか。それとも自民党の改憲草案のように、あまり触れられないものになっていくのか。注目に値すると思います。

参政党投票者は「反ワクチン」よりも「反外国人」傾向

参政党支持者はこれまで、「反ワクチン」や「オーガニック」などのキーワードで語られることも多くありました。実際、それらの傾向は、他の都民全般と比べても高い傾向にあります。

一方で特筆すべきは、「ワクチンへの警戒」よりも遥かに、「愛国的主張」「外国人への忌避」の方が、参政党投票者の支持度が強いということです。

参政党投票者の、「反外国人」傾向の一端が見えるデータが、以下のものです。

全体として参政党投票者は、「治安」「福祉」「経済」などの観点から、外国人のことを脅威だととらえる傾向が強くあります。また、外国人の「受け入れ」や「共生」に、強く反対しています。これは、東京都の有権者全体と比べても高い傾向といえます。

例えば東京都有権者全体の回答でも、「外国人が増えると犯罪も増えると思う」という項目については、「とてもそう思う」が38.3%、「すこしそう思う」が38.8%となっています。都民全体においてもかなり高い傾向と言えますが、参政党投票者については「とてもそう思う」だけで」68.9%と、より顕著な態度を示していることがわかります

参政党投票者は、外国人に対して強く警戒を示しながら、「日本をなめるな」「日本人ファースト」という言葉に共感している。こうしたことを考えれば、参政党は今後も、「反ワクチン」よりも「外国人政策」に軸足を置いた発信を強めていく可能性があります。

また、今回の調査では、投票者のジェンダー観についてもいくつか尋ねています。参政党はLGBT理解増進法、同性婚、選択的夫婦別姓に反対していますが、投票者もまた、都の有権者と比較すると、より強い「性別役割分業意識」などがみて取れました。参政党独自のジェンダー観についても、さらなる発信が予想されます。

参政党投票者は、「極めて右派的」な傾向

さて、もう一つ、データを紹介します。

今回の調査では、スクリーニングの段階で、「保革イデオロギー」の自認について聞いています。これは、保守/革新の政治的な位置付けを探る割と古典的な尺度で、回答者に次のように尋ねるものです。

「ある政治的な立ち位置を示す表現として、よく保守的(右派)とかリベラル的(左派)とかいう言葉が使われています。そこで、あなた自身は、どのような政治的な立場だと思いますか。0〜10の数字は5を中間に、0が「もっともリベラル(左派)」、10が「もっとも保守(右派)」とお考えください。もし、ご存知でない場合、わからない場合、答えたくない場合は、「わからない・答えたくない」をチェックしてください。

あなたはご自身を、保守的だと思いますか、それともリベラル的だと思いますか。各回答者にこうした問いを尋ね、その傾向を分析するものです。

まず、図の見方を簡単に説明します。

例えば都民ファーストの会の投票者は、中央の「5」に近い値になっています。これは、都ファの投票者は、自身の政治的立ち位置を「中道」だと捉えている人が多いということです。

この尺度で見ると、自民党、立憲民主党、共産党ではそれぞれ下記のように、自身の政治的立ち位置を認識している人が多くなっています。

自民党:右派寄り
立憲民主党:やや左派寄り
共産党:かなり左派的

なお、今回は予算と調査項目の上限から、議席獲得のなかった政党のうち、「日本保守党」と「れいわ新選組」の支持者は聞けていません。

さて、目立つのは、やはり参政党投票者の「保守・右派」認知です。自民党、国民民主党など他の政党と比べても、極めて保守・右派的であるという自認を持つ人が多かったのです。

このことから、「東京のリベラル層が雰囲気で参政党に入れた」というような言説は、全体としてあてはまりそうにありません。むしろ参政党は、「極度に右派傾向の強い人々を、特定の選挙区でしっかりまとめて取った」といえそうです。

では、参政党投票者は、どういう属性の人が多いのか。都議選以前はどのような投票行動を取っていたのか。次回以降の記事で、さらに見ていきます。

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本調査は、選挙後すぐに調査設計に取りかかり、こうして発信までこぎつけられました。日頃からご支援くださっているサポーターのみなさまのおかげです。本当にありがとうございます。

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